広島県は、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定数が2022年、2023年と2年連続で全国9位となりました。健康経営への関心が年々高まっている地域であり、熱き思いを抱いて取り組む企業が多く見られます。この度、「地域で活かし、地域で広げるACTION!セミナーin広島」が2023年9月8日(金)に開催されました。県や協会けんぽの推進事業や実践企業事例の紹介から気づきやヒントを得ようと、健康経営優良法人の申請を計画している企業をはじめ多くの方々が出席されました。
・経済産業省
経済産業省から、ヘルスケア政策や健康経営について、さらに将来の展望や企業が活用できるインセンティブの内容について話がありました。
・協会けんぽ広島支部
協会けんぽ広島支部から「ひろしま企業健康宣言」の概要やサポート体制について説明がありました。また健康経営がもたらす効果について、分析結果が紹介されました。
・広島県
広島県より、働き盛り世代をターゲットとした健康づくり推進事業について説明がありました。健康経営では実証実験やセミナーの開催、健康経営優良企業の表彰を行っています。
・<実践企業事例>八天堂
3年連続でブライト500に選ばれている八天堂は、元来自社が持つ志や信条に則ったかたちで健康経営に取り組んでいます。その志や取り組みについてお話いただきました。
・<実践企業事例>伊豆義
ブライト500、広島県健康経営優良企業への認定という実績がある伊豆義が、どのように健康経営に取り組み始めたのか、苦労した点や感じることについて語っていただきました。
・健康経営優良法人認定事務局
健康経営優良法人認定事務局を担う日本経済新聞社から、健康経営のポータルサイトの活用方法や今年度の申請について注意すべき変更点など情報共有がありました。
地域における健康経営の推進について(経済産業省)
はじめに、経済産業省が「地域における健康経営の推進について」と題し、最重要事項として取り組むヘルスケア政策と企業における健康経営の位置付け、取り組み事例などを紹介しました。広島県は健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)の認定数について、前年度増加率が全国で3番目に高く、前向きかつ積極的に取り組んでいると強調。健康経営に取り組むことで活用できる国や自治体、金融機関のインセンティブ措置についても説明しました。
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協会けんぽ広島支部の取組みとサポート〜ひろしま企業健康宣言について〜(全国健康保険協会広島支部)
続いて、協会けんぽ広島支部の尾田慎一氏(以下、尾田氏)が「ひろしま企業健康宣言」の概要とサポート内容、さらに広島支部独自で健康経営の効果を分析したデータについて紹介しました。
尾田氏 健康経営を普及促進し、その取組みを社内外に発信できるように「ひろしま企業健康宣言」を実施しています。エントリー事業所は毎年1,000社単位で増えており、2023年7月時点で、4,146社となっています。広島県内において従業員の健康づくりに対する意識が浸透してきていると感じます。
健康宣言エントリー後は、広島支部が発行する健康情報誌(季刊誌)や健康づくり講座における講師派遣などを活用していただき、健康経営の実践に向けた具体的な行動計画などを進めていただきます。健康経営への取組みを進めた上で、チェックシートにより前年度の取組状況を振り返っていただき、認定基準を充足された事業所を「健康づくり優良事業所」として認定しています。また、次のステップとして、オリジナルで制作した「健康経営優良法人サポートブック2024」を活用し、健康経営優良法人認定制度の申請のサポートをしています。
広島支部において、健康経営の取組みやメンタルヘルス対策をテーマにレセプトデータや健診データなどを分析したところ、資格喪失者(退職者)の割合について広島支部全体の平均は12.7パーセントでしたが、「令和4年度健康づくり優良事業所」だけで見るとわずか9.2パーセントと3.5ポイントの開きがあることが分かりました。さらに10代・20代の資格喪失者に絞ると7.3ポイントも差が開いており、人材確保の面からも健康経営の重要性がわかります。また、今年2月、加入事業所様を対象に「職場の健康度チェック」アンケートを実施しました。興味深いアンケート結果として、経営者層が健康経営に積極的に関わっている企業に比べて、取り組んでいない企業は退職リスクが約3倍もあることがわかり、経営者層の関与がいかに重要かが垣間見える結果となりました。
今後も、従業員の健康づくりのサポートをしていきたいと思いますので、協会けんぽ広島支部を積極的に相談・活用してください。
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「働き盛り世代の健康づくりと健康経営」について(広島県)
広島県健康福祉局健康づくり推進課の山下十喜氏(以下、山下氏)からは、働き盛り世代の健康づくりの推進の政策や健康経営の拡大推進について紹介がありました。
山下氏 広島県では、県民の方々がそれぞれのライフスタイルを実現できるよう、県の総合計画である「ひろしまビジョン」を設定し、健康寿命の延伸という点で健康事業を実施しています。「ひろしまビジョン」では「10年後の目指す姿」を挙げており、「人生100年時代を迎える中、県民一人一人が、それぞれのライフステージに応じて、心身ともに健康で活躍していくためにも、若い時期から生涯を通じた健康の大切さとリスクを意識し、デジタル技術やデータも活用しながら、運動や食事等の生活習慣の改善など、健康を維持する行動が身についている」ということを目指す姿としています。
広島県の特徴として、女性の健康寿命が全国平均よりも低いことが挙げられます。平均寿命と健康寿命の差を見ると男性が9年、女性は13年もあるためこの値を縮める、すなわち健康寿命を延伸するために健康づくり推進事業を展開しています。高齢になっても健康に過ごせるように、若い世代へのアプローチも必要となってくるのですが、食育や運動習慣の推進といった働きかけにとどまっているのが現状です。また、県内従事者の8割を有する中小企業の健康経営が進んでいないことも課題として挙げられます。
これらを打開すべく、まず2022年から64歳頃までの働き世代をターゲットとした実証実験を開始しました。これは産学官が連携し、AIを活用した疾病リスクの提示や行動変容につながる介入方法を開発するための実験です。さらに健康経営を推進するための実証実験、健康経営を導入・継続するためのセミナーの開催、協会けんぽの「ひろしま企業健康宣言」認定企業の中から、健康経営優良企業を表彰する取り組みもはじめています。
県民が日常生活に制限なく安心安全に暮らしていくためには、若い世代に向けた実効性のあるアプローチが必要です。そのためにも健康経営を実践する企業の拡大推進が不可欠ですので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。
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<実践企業事例>八天堂が健康経営で実現したい志(八天堂)
県内の実践企業事例として、株式会社八天堂の前田昌巳氏(以下、前田氏)が登壇。2021年から3年連続でブライト500に選定されている同社の健康経営に対する取り組みや志についてお話されました。
前田氏 我が社は、美味しいお菓子で周りの人を元気にしたいとの思いで1933年に創業し、今年90周年を迎えました。100周年を見据えて、11の事業とともに日々活動しています。「食のイノベーションを通じた人づくりの会社」でありたいという志がベースにあり、信条(クレド)に「八天堂は社員のために・お品はお客様のために・利益は未来のために」を掲げています。一人ひとりの成長が会社の成長に、さらに会社の成長によって新たな仕事に挑戦できるといったスパイラルアップのイメージを描きながら、成長し続けています。
2019年から取り組み始めた健康経営においてもこの志を活動の柱とし、クレドを実現することを目指しています。「働きがい醸成による主体的な人づくり」を目指す姿に設定し、心身の健康の分野では、定期検診100%や臨床心理(メンタル)カウンセリングを推し進めました。一方、カウンセリング制度を作っても、不調を言い出しにくく発症してから受診するケースが多かったため、健康パルスサーベイを導入し、予兆をつかむといった工夫も凝らしました。
そのほか、ワークエンゲージメントの向上においては社内・社外報の発信や人事考課制度(資格取得支援)、インクルージョンな働き方支援の制度については2024年度の全社導入に向けたトライアルを始めました。結果として2022年の定期検診実施率は98.2%、パルスサーベイの参加率が68%と健康経営が徐々に浸透しているのを実感しています。さらに、パートや派遣従業員に向けた情報発信も強化し、約半数がナレッジ管理ツールへの参加に至りました。
取り組みによる変化として2つ挙げると、1つ目は、これまで”点の活動”だったものが、協会けんぽや広島県など健康経営に関するサポートとつながり、活動の幅が広がっていくことで”線/面の活動”に発展していることです。2つ目は社内の連携において、広報ブランディング室を組織体制に組み込むことで一貫性とスピードを持って、社内外に情報発信できる環境が整ったことです。
我々は、毎年実施するエンゲージメントサーベイの各質問で「肯定回答80%以上」を目標としています。2022年、八天堂クレド・理念の理解・浸透について肯定的に回答した割合は69.0パーセントでした。今後この数値を上げていけるよう健康経営を続けて、「物心両面で豊かな社員の創造」を叶えたいと思います。
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<実践企業事例>健康経営の取組とこれから(伊豆義)
続いて、同じく県内の実践企業事例として、伊豆義株式会社取締役副社長の伊豆田浩央氏(以下、伊豆田氏)に健康経営の取り組み内容や実際に取り組んで肌で感じていることなどについて講話いただきました。
伊豆田氏 今回、3年連続でブライト500に選定されたこと、そして2022年度に広島県健康経営優良企業に選ばれたことがきっかけでここで話す機会をいただけたのだろうと考えています。特別なことをしている実感は全くなく、評価されていることに驚きもあるほどです。強いて言えば、社外発信を活発に行っているからでしょうか。話を聞いて「認定を取れるなら、我が社も挑戦してみようかな」というきっかけになれば嬉しいです。
当社は、アパレルパーツ(服飾資材)の卸売販売及び輸出入を営んでいる会社で、創業から90年近く経ちました。そんな中、私の父である社長が2019年夏頃、体調を崩してしまったことがきっかけで「健康は大事だ」と意識するようになったのです。保険会社からのアドバイスもあり、まず「健康習慣アンケートの実施とフィードバック」と「健康診断の要再検査、要精密検査の方への受診勧奨」の2つについて取り組みはじめました。例を挙げると、アンケートから飲み物に対する意識の低さが判明しました。毎朝、会社の缶コーヒーが売り切れるような状況だったのですが、働きかけが功を奏し、麦茶が売り切れるようになったのです。さらに当初、自己負担ということから受診勧奨については不評で、担当者も声かけに苦労していましたが、検査ががんの早期発見に結びついたケースなど出てきて、次第に意識が高くなっていきました。
現在進めている取り組みとして、健康経営サポートプラットフォームの導入や「伊豆義ウォーキング大会」という健康増進イベントの開催などがあります。そして、再検査や精密検査の費用を会社で負担することも決めました。これは単純に、費用面がネックとなっているのであれば、そこを手助けすれば声かけもよりしやすくなるという考えから始めました。
健康経営によって生産性を向上するという話題が出てきますが、正直なところ、劇的に生産性が上がっているわけではありません。ただ私としては、従業員が健康で働きやすい環境を築くことで、その副産物として生産性の向上に結びつくと考えています。社内の活性化にはつながっているので、長い目で見て取り組み続けることが大切ではないでしょうか。また、時には冷ややかな目で見られたり、なかなか理解を得られなかったりする場面もあります。しかし、粘り強く働きかけていくことが必ず社員、会社のためになることは確かです。
当社は、10年後の創業100周年を、OBも含め皆で元気に祝うのが社長の願いです。これを実現すべく、また社員の健康第一で企業が持続的に成長するためにこれからも健康経営に取り組んでいきたいと思います。
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健康経営優良法人認定制度について(健康経営優良法人認定事務局)
セミナーの最後に、健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)からポータルサイト「ACTION!健康経営」で特に活用してほしいポイントについて説明がありました。加えて、今年度の申請における改定ポイントについて説明。ブライト500へエントリーした企業にはフィードバックを送付し、自社の健康経営の現在地が分かる仕組みも新たに取り入れられました。全国的に見ても社外の交流が活発な広島県が、健康経営を通して暮らしやすい地域づくりに励んでほしいとの思いを話されました。