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2025.01.20

健康経営を後押しする企業として、社員全員で「簡単・楽しい・続けたい」取り組みを探究・実践~実践レポート

【株式会社タニタヘルスリンク】中小規模/ヘルスケアサービス

・健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)の認定を受け、ブライト500に選出。
・健保・健保連の提供するセミナーや相談窓口などを上手に取り入れながら、取り組みを進めている。
・自社で健康経営に取り組むだけではなく、企業や自治体の健康経営・健康づくりをサポートする事業を展開。
・社員全員が楽しく、継続できる取り組みを模索。効果のあったものはサービスにつなげる。

「日本をもっと健康に!」をスローガンに掲げ、法人・個人向けのヘルスケアサービス事業を展開している株式会社タニタヘルスリンク(略称:THL)。健康経営に取り組む企業や「健康まちづくり」を推進する自治体など全国で約30万人(2024年3月時点)をサポートしている。

そうしたなかで、「まず自社の社員が健康に楽しく働ける環境にしなければならない」と取り組みを進め、2019年から毎年「健康経営優良法人」(※1)に認定。2023・2024年はブライト500に選出されている。「社員一人ひとりがいかに楽しんで取り組めるか工夫している」という広報担当の山本耕三氏(以下、山本氏)と健康経営実務担当(保健師)の島田保子氏(以下、島田氏)に話をうかがった。

健保との密な連携で、幅広い施策が可能に

オフィス入口に設置のデジタルサイネージには社員全員の歩数ランキングなどをリアルタイムで表示

Q:健康経営に取り組み始めた経緯についてお聞かせください。

山本氏:2008年から「高齢者の医療の確保に関する法律」にあわせて特定健診の実施が義務付けられました。そのタイミングでメタボリックシンドロームのリスクについて認識し、社員の健康を“見える化”しようとグループ全体で取り組み始めたのがきっかけです。翌年には社員向けの「健康プロジェクト」を立ち上げました。

 

現在は副社長をリーダーに置く「健康プロジェクト事務局」を軸に、社員の歩数や健康診断データなどに基づき、各種プロジェクトの推進や健康保険組合(以下、健保)との連携を図るなどあらゆる取り組みを進めています。

島田氏:私は保健師の立場から、事務局メンバーに加わっています。社内で効果があった施策などをサービス化していくというのが弊社のビジネスモデルなのですが、取り組みの中で得られた生の声を、そのまま社外のセミナー等で講師としてお話する役割も同時に担っています。

社内では、女性社員が年々増えている状況です。そのため、新たな取り組みに着手したり、中身をブラッシュアップしたりを繰り返しながら、けっして女性だけではなく、誰もが健康に働き続けられる職場環境づくりを進めているところです。

Q:貴社の取り組み方として、健康保険組合(以下、健保)・健康保険組合連合会(以下、健保連)と密に連携している点が特長の1つだと感じます。どのように活用されていますか。

島田氏:私が健保などとの連絡窓口を担当しています。連携して進めた方がよいと考える理由は2つあります。1つ目は、特定健診と特定保健指導の実施率を上げていくためには連携することが必要不可欠だからです。社員には、労働安全衛生法の定期健康診断を兼ねて健保が実施している健康診断を受けてもらっています。健康診断実施後、その結果を共有していただきながら特定保健指導の勧奨などを進めています。これは、適正体重維持者を増やすことにも直結しています。健康診断結果を共有してもらうことで、誰がどのような状況なのかを知ることができ、健康管理をする上で非常にありがたいです。

2つ目は、健保や健保連が毎年さまざまなテーマでセミナーを実施したり、女性の健康・育児についての相談窓口があったり、さらに予防接種の補助があったりするなど豊富なサポートをしてくれるからです。これにより、コラボヘルスの視点を持って取り組みを進められています。

男女・年代関係なく働きやすい制度設計をめざす

オフィスセキュリティやOA機器などのネットワークに接続可能な活動量計を社員証に

Q:オフィスで取り入れている施策の中で、特徴的なものはありますか。

山本氏:日常の中に「はかる」ことを取り入れやすいように、オフィス内に体組成計と血圧計を設置したり、歩数や消費カロリーが計測できる活動量計を社員証として、オフィスセキュリティやOA機器などさまざまなネットワークに接続できるようにしたりしています。また、運動習慣を身につけるために、歩数に応じてデジタルギフトや電子マネーなどと交換可能なポイントプログラムも実施しています。このプログラムは健康づくりへのモチベーションを高める効果があり、加えて人間の心理に訴える発想で、「歩いてポイントを貯める」とは反対に、スタート時点に一定のポイント数を付与して「歩かないとポイントが減る」といった仕組みを取り入れることで、8,000歩/日以上を達成できる社員の割合を増やすことに成功しています。

島田氏:働きやすい職場づくりという面では「一時外出制度」があります。子どものお迎えなどで一旦仕事を離脱できるもので、用事が済んだ後にテレワークも含めて仕事に戻る仕組みです。自身の通院や家族の介護などにも幅広く利用できるように制度設計しています。

Q:女性の活躍促進といった観点からは、どのような職場づくりを進めていますか。

島田氏:2022年に「女性の活躍推進プロジェクト」を立ち上げ、女性特有の健康課題などに柔軟に対応できる体制を整え、取り組みを進めています。例えば、長時間の会議だと生理用品の交換などができず、結果としてプレゼンティーイズムに影響を及ぼすかもしれません。そこで、女性向け用品のお試し箱を置いて、快適さが得られる商品を試すといった取り組みを行っています。

加えて、生理休暇の名称を「コアラ休暇」に変更し、申請時の心理的負担を軽減させて取得しやすくなるように工夫しました。コアラ休暇については、不妊治療や親の介護など男女ともに活用できる制度にするために、さらにブラッシュアップしていきたいと検討しているところです。このように、女性の活躍推進プロジェクトのメンバーが中心となり、ミーティングなどを通じて導入したものの利便性や効果などを検証しながらより良いものとなるように検討を重ねています。

Q:さまざまな取り組みの結果、どのような効果が表れていますか。

島田氏:定期健康診断受診率やストレスチェック受検率、そして特定保健指導の参加率は全て100パーセント(2023年実績)を達成しています。適正体重維持者の割合の増加についても着実に上昇して100パーセントに近づいています。また、プレゼンティーイズムも年々下がり、ワークエンゲージメントも上がってきています。

山本氏:「運動習慣を身につけましょう」「生活習慣を改善しましょう」、そして「睡眠を良くしましょう」といった各種取り組みを進めたことで、プレゼンティーイズムは2020年に比べて約24パーセント減少し、10パーセント(2023年実績)まで下がっています。

一過性とならないように、楽しく・続けたくなるように工夫することが重要

アプリに記録される歩数を競うウオーキングラリーの画面と、社員同士のコミュニケーションを活性化させるコミュニティサイトの画面。ウオーキング中に撮影した景色などを共有することで、新たな会話が生まれるといった効果も

左より、社内版SNS「コミュニティサイト」、バーチャル歩数競争「ウオーキングラリー」

Q:取り組みの中で、最近実際にサービス化につながったケースはありますか。

島田氏:毎年の健康経営で仮説・検証といったPDCAサイクルを循環させる中で、効果が数値としても明確に表れた取り組みは、企業や自治体に向けたヘルスケアサービス『タニタ健康プログラム』のメニューとして提供しています。最近提供を開始したメニューの一例では、今年(2024年)からスタートした『ミライフ』があります。これは、健康診断と生活習慣データからAI(人工知能)が将来の健康リスクを予測するサービスです。現状と将来予測を“見える化”することで、さらなる健康への意識向上や行動変容につなげるのが目的で、生活習慣における課題の改善をサポートする『健康シフトプラン』とパッケージングして展開しています。

また、株式会社フォーバルと大塚製薬株式会社と連携して『タニタ健康プログラム with 健康社長(※2)』の提供も始めました。日本を支える中小企業の経営者は営業から販売、経営管理まで全て一人で担当している方も多いですが、ひとたび倒れてしまうと、事業が成り立たず最悪の場合、廃業・倒産につながってしまいます。そのため、健康経営を始めるにあたって、まず経営者の方々に健康に気遣ってほしいとの思いから、専用アプリで日々の状態を計測したり、さまざまなイベント・コミュニティから健康について知る機会を提供したりしてサポートするものです。

Q:地方自治体との健康づくりに関する取り組みも進められていますね。

山本氏:現在、全国20自治体と健康づくりに関する協定を結んでいます。地域全体で楽しみながら挑戦できるように、歩くことを中心に仕組みをつくっています。効果が数値として表れた自治体もあります。例えば、医療費・介護給付費の抑制額で見ると、田原本町(奈良県)は2年間の総額で約8,100万円、遠野市(岩手県)では5年間の総額で約1億300万円の効果が確認されています。いずれの自治体も複数年にわたり健康事業に取り組んでおり、健康づくりは取り組みを積み重ねていくことで、効果が見えてくる傾向があります。

Q:社内で健康経営に取り組み、社外では事業を通してサポートするという双方の立場から見て、社員全員がモチベーションを保ちながら、継続的に健康づくりに参加するためのポイントは何だと考えていますか。

山本氏:無理なく楽しく続けられるように毎年、少しずつ拡大発展させながら、コミュニケーションの活性化にもアプローチしていくことが重要です。

例をあげると、ある年は自然と歩きたくなるように社員同士で歩数を競争させる 「ウオーキングラリー」を取り入れたことで、日々の歩数が増加しました。これをさらに発展させて、今年は健康経営に取り組む5社と連携して企業対抗戦で歩数を競い合うイベントを開催しています。また、コミュニティサイト(社内版SNS)を立ち上げて、ウオーキング中に撮影した景色などを共有することで、それをきっかけに新たな会話が生まれるといった効果も生まれています。ウオーキングラリーやコミュニティサイト機能は、実際に「タニタ健康プログラム」に盛り込まれています。

島田氏:CHO(※3)が旗を振って、社の風土をつくっていくことが大切だと思います。その先で、社員自らが意識して健康を目指すのではなく「結果として、気がつくと健康になっていた」というような、自然なかたちで健康づくりに取り組める環境が構築されるのが理想です。そのためには健康診断の結果を見たり、セミナーで講話を聞いたり、健康づくりの施策にチャレンジしたりと “健康”について触れる機会に何度も巡り会えるような仕組みをつくっていくことが重要だと感じています。

Q:これから健康経営に取り組みたい企業や社員の健康を楽しく管理できるようにしたいと考えている方々に向けて、メッセージをお願いします。

山本氏:弊社の代表取締役社長兼CHOの土志田敬祐は「経営者の誰しもは、ともに働く仲間に“健康で楽しく働いてほしい”との気持ちを持っているのではないかと思います。人手が足りない・コストをかけられないといった中でも、何か取り組めることはないか考えて、弊社や他社の取り組みを参考にしながらできることから始めてみてはいかがでしょうか」と訴えています。そして、今回のインタビューが「健康経営に取り組む企業が増えて、社員一人ひとりが充実した職場生活を送れる環境が広がる一助になると嬉しい」とも話しています。

私たちは、タニタグループの一員として健康経営への取り組みを長年続けてきました。今後も実践者として、グループ全体で健康経営への取り組みを拡大・発展させていきたいと考えています。

▪︎注釈
(※1)大規模法人部門・中小規模法人部門の2部門を通じて2019年から6年連続で健康経営優良法人の認定を受けている。
(※2) “健康社長”は大塚製薬株式会社の登録商標。
(※3)CHO:Chief Health Officerの略称で、健康管理最高責任者。

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