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2026.09.24

健康経営を支える専門職~Vol.3 中小企業診断士

健康経営に関わる専門職の視点から、健康経営のメリットや効果を多面的にひも解くインタビューシリーズです。

中小企業診断士は、中小企業のさまざまな経営課題解決に向け、健康経営をサポートする専門職です。今回は、中小企業診断士の弥冨尚志氏に、無理なく成果を目指す健康経営のポイントを伺いました。

プロフィール

弥冨 尚志

中小企業診断士、東京都中小企業診断士協会認定 健康ビジネス研究会 会長

約20年にわたる会社員生活を経て独立し、コンサルティング会社を開業し、中小企業診断士としての活動を開始。東京都よろず支援拠点をはじめとする公的支援窓口にて、多数の経営相談に対応する。健康経営の立ち上げ当初から経済産業省の取り組みに参画し、健康経営アドバイザーなどの資格創設にも携わる。

 

現場に合った健康経営のハウツーを提案する仕事

ーー中小企業診断士として、どのような立場で健康経営に関わっていらっしゃいますか?

 

中小企業診断士は、中小企業の創業、売上拡大、事業承継、価格交渉など幅広い経営課題に対して助言する国家資格です。健康経営については、主に商工会議所の窓口で経営者や担当者から相談を受け、個別にアドバイスしています。

 

ーー具体的な支援内容を教えてください。

 

現状把握ののち、その会社の実態に即した推進体制や取り組みやすい施策を具体的に提案します。ヒアリングだけでなく、実際に職場を訪れて様子を確認するケースが大半ですね。また、一般的な経営相談では事業計画・経営計画レベルの助言が中心となりますが、健康経営についてはハウツーまで落とし込んだアドバイスをしています。

 

ーー費用をあまりかけず、かつ効果的な健康経営の取り組みを行う工夫はありますか?

 

従業員が日常業務の中で自然に実践できる施策に取り組むとよいでしょう。例えば、運動面では階段の利用を促進する「ツーアップスリーダウン運動」*、食事面ではオフィスの自動販売機の取り扱い商品を、糖分の多い清涼飲料水からお茶・水に切り替える、といった方法が考えられます。何かひとつの取り組みではなく、運動、食事、過重労働対策など、さまざまな側面から複数のアプローチを試みると、従業員の健康に対する認識も変わりやすくなります。

健康経営の最終的なゴールは従業員の健康そのものではなく、あくまで会社の生産性や業績の向上です。数値で管理しやすい健診結果の改善にとらわれすぎず、風通しのよい組織づくり、一人ひとりが安心して働けるようなウェルビーイングの実現を目指してほしいと思います。

 

* 省エネと健康増進を目的に「上り2階」「下り3階」を目安として、エレベーターを使わず階段を利用する活動。

 

ーー健康経営に取り組むにあたって、社内のだれをどのように巻き込むと進みやすいと考えますか?

 

業務上の役職とは異なる枠組みで、現場の適任者に健康経営の推進役を担ってもらう方法がおすすめです。従業員の仕事の愚痴や悩みを聞きながら、健診の受診や健康経営施策への参加を促す、健康経営の盛り上げ役ともいえます。世話好きで、アンフォーマルな会話が得意で、新しい取り組みを楽しんでくれるような人が社内にいれば、まさに適任です。

もし現場に適任者が見当たらない場合は、専務などの役員をCHO(Chief Health Officer)に任命する方法もあります。

いずれにしても、担当者だけに負担が集中しない体制づくりが鍵になります。

 

ーー健康経営の効果として現場が感じられる「変化」や「手応え」にはどのようなものがありますか?

 

健康経営のさまざまな施策を進めていると、これまで接点のなかった従業員同士も言葉を交わすようになり、お互いを気遣えるようになります。営業担当と経理担当が互いの負担を慮りながら経費精算するようになったり、育児のために定時退社する従業員をほかの従業員がすすんでフォローするようになったり──。こうした働きやすい職場環境ができると、従業員は「この会社でずっと働き続けたい」と思うようになります。経営者視点でいえば、離職率の低下と人手不足の解消につながります。経験やノウハウ、ネットワークが蓄積されるため、長期的な生産性向上、収益性の改善も期待できるでしょう。

より本質的なのは、従業員が会社に愛着を持てるようになることです。私が見てきた実例でも、先般のコロナ禍で一時的に会社を離れた従業員が再び戻ってきたのは、いずれも健康経営に取り組んでいた企業でした。健康経営は経営者と従業員、従業員同士の心と心がつながる組織づくりであると考えます。

 

ーー健康経営に取り組む企業へアドバイスをお願いします。

 

厳格な目標と計画を定め、専門のサービスを導入して──といった「形」から入ってしまうと、経営者も従業員も継続がつらくなります。学校に例えると、事業は勉強、健康経営は部活動のようなもの。部活動は成績向上には直結しませんが、生徒同士のコミュニケーションが活発になり愛校心が育まれるのは、勉強漬けの学校よりも、部活動を楽しめる学校なのではないでしょうか。

ぜひ、全社で楽しんで取り組める健康経営のあり方を模索してみてください。

まとめ

健康経営が人手不足の解消、生産性の向上につながるのは、会社と従業員がお互いを大切にし合える組織をつくれるからだといえるでしょう。中小企業診断士の力も借りながら、経営者と現場従業員の双方が無理せず楽しんで取り組める、自社に合った健康経営の進め方を検討してみてください。

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