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地域の雇用を守る、働く心に着眼した健康経営~実践レポート⑦

2023.08.28

【協栄金属工業株式会社】中小規模/製造業

・健康経営に取り組み始めたきっかけは、会社を存続させるため。
・社員の提案を積極的に取り入れて施策を実施。社員を信じる経営陣の姿勢が、社員の行動に変化を与えた。
・ストレスチェックの収集と分析により、状況に適した取り組みを実施。高ストレス者の割合が20.0%から6.2%に。
・障がい者も健常者も隔てなく共に
働きやすい体制を構築。他社員にも水平展開することで、離職率を28.8%から2.5%へ。

島根県雲南市に本社を置く金属製品を製造する企業。“和の心”を重んじる同社は誰にでも働きやすい企業を目指し、女性雇用率16.0%、60歳以上雇用率13.3%、障がい者雇用率10.0%と、多様性に富んだ人財採用を実現している。

2013年から健康経営に取り組み、優良企業として多くの賞を受賞。健康経営優良法人ブライト500にも、2021年から3年連続で認定されている。

会社全体で取り組む健康経営の進め方とは

Q:御社が健康経営に取り組み始めた経緯を教えてください。

きっかけは、バブル経済の崩壊やリーマンショックを経て、会社の存続が危うくなったことです。赤字続きだった当時は社員の減給や解雇を行なわざるを得ず、長期入院を伴う労働災害まで発生していました。社内の雰囲気もいいとは言えず、社員から笑顔が消えて、皆が下を向いて歩くような状況でした。

そんな中で新体制が発足し、会社を存続させる方法について、社員と何度も話し合いました。そして、そもそも我々が会社を経営する目的とは何かと考えた時、「社員の幸せのためだ」という結論に至りました。

こうして社内環境の大改革をスタートさせましたが、業績を向上させて社員を増やしても、その社員がすぐに退職してしまうことが続きました。経営陣と現場で意識の乖離が起こっていて、経営陣の思いが社員に伝わっていなかったのです。

そして、この問題の解消方法を模索するために参加した経営者セミナーで、健康経営を知りました。社員の幸せのために会社を経営するのなら、人を大切にする経営をしなければならない。それを実現できるのが健康経営だと感じました。

Q:そこから、どのように健康経営を進めていきましたか。

全社員の力を集結して健康経営に取り組みました。社内に安全衛生委員会を設置し、スローガンと計画を立てて、組織的に活動を行なっていました。工場のレイアウト変更や3S活動、業務や経営資料の徹底した見える化など、取り組んだ施策は多岐に亘ります。社員への情報共有も徹底し、各取り組みの目的や結果を分かってもらえるように意識しました。

 

Q:その中で、経営陣として変わったことはありましたか。

社員を信じて、思うようにやらせてみました。社員が提案してくれたことは、成功する確率が低いと思っても全て実行に移すんです。もちろん全ての取り組みが成功するわけではありませんが、3S活動や美化活動のように成果を生む取り組みも出てきます。その時は皆に「これはあの人の提案です」と伝えました。

そうすると、「次はこうした方がいい」「自分にもやらせてもらえないか」と、前向きな意見を出してくれる社員が増えていきました。今では業績も回復して、昇給や賞与による還元もできるようになっています。工場見学に来た方や地域の方から褒められることもあり、社員の顔に自信や誇りが戻ってきました。

社員が提案した改善策を経営陣が形にして、それが成果に結びつく。この好循環が、社員の行動を少しずつ変えていったのだと思います。そして、社員が前向きになれるような環境を作ることが、経営陣の大切な役割なのではないでしょうか。

ストレスチェックは、寡黙な社員の心を「想う」ツール

Q:御社は特にストレスチェックに注力しているとのことですが、これにはどのような意図がありますか。

弊社に限ったことではないと思いますが、製造業を選ぶ方は寡黙なタイプが多くて、コミュニケーションが苦手なんです。そういったタイプの方は悩み事を直接伝えることが難しいので、個人面談ではフォローしきれない面があります。そこで、ストレスチェックを活用して社員の状態を確認するようにしています。

 

Q:ストレスチェックは、どのように活用していますか。

ストレスチェックに回答した社員に確認を取って、情報公開に同意してくれた社員の回答データのみを集めて分析しています。その結果、会社で変えられることは積極的に改善するようにしています。

例えば、2017年の調査では職場環境が主なストレスの原因であることが分かりました。そこで暑さ対策として、屋根に断熱塗装を行ない、工場に冷暖房設備とLED照明を導入しました。トイレや休憩室にも工事を入れて、綺麗にしています。

さらに、受動喫煙対策も工夫しました。喫煙者を排除するのは簡単ですが、弊社にとっては喫煙者の方々も大切な財産ですので、辞めてほしくはないんです。なので冷暖房設備つきの喫煙専用室を2棟設置して、喫煙者の方も快適に過ごせるように配慮しました。そのような環境を用意した上で、禁煙を促す呼びかけも実施しています。

 

Q:その結果、どのような改善が見られましたか。

2017年では20.0%だった高ストレス者の割合が、2020年には6.2%まで下がりました。2022年は12.2%と増加してしまったのですが、結果を分析してみると、職場環境に関するストレス値は大きく改善していて、働きがいに関するストレス値に課題がありそうだということが分かりました。この分析結果も踏まえて、さらに改善を重ねていけたらと思っています。

 

「人を変えずに仕組みを変える」~健康経営で実現した障がい者雇用~

Q:御社は地域人財を貴重な「戦力」だと考えているそうですが、ここにも健康経営は役立っていますか。

もちろんです。例えば、過疎化が進む地域に拠点を置く弊社では、多くの障がい者を雇用しています。その雇用率は、雲南市内で断トツの1位だそうです。ここまで多くの障がい者に働いていただけるのは、人を大切にする健康経営にあってこそだと思っています。

 

Q:具体的に、どのような取り組みをされましたか。

障がい者の方の特性を理解して、やり方を変えていきました。部品のセット方法を口頭で理解してもらうのが難しいなら、イラストと文字の表示を作って説明すればいい。部品の数を数えるのが難しいなら、数を数えなくても正確に作業ができる治具を導入すればいいのです。

他にも、梱包作業を軽減するために簡易クレーンを導入したり、プレス機の押しボタンをタッチ式に変更したりと、負担軽減やミス防止のために様々な設備投資を行ないました。これらの設備は、健常者の社員にも役立っていると思います。

弊社も実際に作業をしていただいて驚いたのですが、障がい者の方はとても素直で真面目ですし、仕事ぶりも丁寧なんです。不良率もほぼ0ですし、欠勤することもほとんどありません。それを見た他の社員からも徐々に偏見がなくなっていき、皆が彼らに優しく接するようになり、面倒見がよくなりました。

どうしても先入観が先行しがちですが、障がいの影響でできないことを仕組みでカバーすれば、障がい者は健常者と何も変わりません。なので、社員の皆で知恵を出し合って、障がい者を支援できる方法を考えました。

Q:設備面以外で、重要視したポイントはありますか。

メンタルヘルスには力を入れています。配置一つにしてもそうです。話すことが苦手な反面、朝から晩まで同じ作業を繰り返すことは得意であるなど、どんな障がいを持っているかによって、得意不得意は違います。そういった特性を考慮して、能力に見合った業務を担当してもらっています。苦手なことをするのは苦痛になってしまいますが、得意なことをより伸ばせると、モチベーションは大きく上がりますから。

それ以外にも、それぞれの体調に合わせた業務時間にしていますし、周囲の社員にも障がい者を孤立させないように協力してもらっています。特に入社から3ヶ月くらいは、極力一人にさせる時間がないように、常に誰かが寄り添うようにしています。個人的な悩みがあった時も支援機関の方がきちんとフォローしてくれるので、トラブルが起きたことは一度もないですね。

この配慮は、健常者にも通じるものです。このような取り組みを新卒社員にも水平展開した結果、2008年には28.8%もあった離職率が2022年には2.5%まで下がりました。

 

社員のストレスを緩和するメンタルヘルスとは

Q:メンタルヘルスに注力するにあたって、外部との連携はどのように取っているのでしょうか。

健康保険公社に紹介していただいた産業医と協力しています。回収したストレスチェックの結果をお渡しして、面談が必要な社員を教えていただいています。また、ストレス値が低くても調子が悪そうな社員を産業医が見つけた場合は、社内で個人面談を行なっています。時と場合によっては産業医が直接面談を行なうこともありますが、社内で面談を行なうことがほとんどです。

 

Q:個人面談は、どんな立場の方が対応していますか。

総務の社員です。現場との利害関係があまりない社員が、皆の心境をうまく聞き出してくれます。その報告を受けて、経営陣は配置転換や設備投資を検討します。

実際に社員の声を聞いてみると、すぐに解決できるような小さな問題も多いんですよ。例えば、「掃除当番で同じグループのあの人とは合わない」と言われたら、グループや掃除場所を変えればいいんです。些細な取り組みかもしれませんが、それだけのことで「会社が悩みを聞いて、対応してくれた。」と、社員のストレスが消えることも多いです。

 

健康経営で実現する“皆が豊かで幸せな人生を送れる会社”

Q:健康経営を推進するにあたって、大切なことは何だとお考えですか。

一番大事なものが何かをはっきりさせることです。

これまで様々な講演に出演してきて思うのですが、「健康経営に取り組んでいます。」と言うと、周囲には綺麗事のように聞こえてしまいます。ただ、最初の話にもあったように、弊社が健康経営に取り組み始めたのは、会社を存続させるためなんです。そして、私たちは「社員の幸せのため」に会社を経営したいと思っています。だから社員を大切にするのは当たり前のことで、健康経営は目的を達成する一つの手段です。

皆が豊かで幸せな人生を送れる会社にするために健康経営に取り組んだ結果、業績向上や離職率低下が実現したのだということを、強調してお伝えしたいです。

 

Q:最後に、今後の展望を教えてください。

弊社があるような過疎地域は、高齢化と人口減少により雇用を守るのも一苦労です。そんな中で1社2社が努力しても、できることには限界があります。弊社のような会社がどんどん増えて、行政や金融などとも協力して、町一丸となって地域を盛り上げていけたらいいと思います。現在弊社では、小学校や中学校に赴いて地元で働く楽しさを伝える活動をしています。そういった取り組みの輪も広がって、地元で働こうと考える人々が増えると嬉しいです。

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