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「女性の健康課題」は高いヘルスリテラシーから~実践レポート⑧

2023.09.29

【トリニティ株式会社】中小規模/卸売業

・健康な生活習慣に寄与するウェアラブルの開発が健康経営に取り組むきっかけ。
・もともと、男性・女性といった性差や職種で区別することがない企業風土がある。
・女性の健康課題への解決施策として、生理休暇の取りやすい仕組みづくりや衛生講話による知識の深化を実施。
社内アンケートでは、男性からも「女性の健康問題について知ることができて良かった」と肯定的な意見が出ている。

社員に向けて健康診断や休暇制度を設けたりする企業は数多くある一方、休暇を実際に取得するには紙ベースで稟議を回す必要があるなど「社員の取得しやすさ」といった申請方法にまで着眼し、気配りする企業は多くない。こうしたなか、トリニティ株式会社は社員全員のヘルスリテラシー向上をはかり、女性向けの休暇を取りやすい仕組みづくりや互いに助け合える環境づくりを実践している。

埼玉県新座市で、スマートフォンアクセサリーなどの企画・製造、販売を行うトリニティ株式会社。「ブライト500」への挑戦という高い目標達成を掲げて、社員全員が安定的かつ継続的に健康を保てる環境づくりに着手した。男女の区別がないフラットな企業風土を土台に、生理休暇を取得しやすくする仕組みづくりや女性の健康問題への理解を促す施策などに取り組んだ結果、2023年3月、「健康経営優良法人2023」の「ブライト500」に選出された。健康経営に取り組むきっかけや創意工夫の方法、活動を進める中での気づきなどについて話をうかがった。

ウェアラブルデバイス「weara(ウェアラ)」の開発が起点に

Q:健康経営に取り組み始めたきっかけは何ですか。

入り口は、当社がウェアラブルデバイスの開発を始めたことです。これはリストバンド型のデバイスで、「自分の活動や睡眠を記録して健康的な生活習慣を身につけること」が目的の商品なのですが、そのような商品をお客さまに提供する企業だからこそ、社員も健康でありたい、健康でなければならないと考えるようになりました。

社員一丸となって取り組むためには、共通のゴールとなる目標設定が必要となります。そのために健康経営優良法人への認定を目指すことにしました。さらに、少しでも多くのことに取り組みたいとの思いから、健康経営優良法人に認定された上位企業から選ばれる「ブライト500」取得に挑戦すると決めました。

 

Q:特に、「女性の健康維持・増進」に努める理由を教えてください。

女性が多い職場ではありますが、当社は性差による区別はありません。そのため、はじめから、“女性”にフォーカスして取り組まなければならない、または何かしらを改善しなければならない課題があると考えていたわけではありませんでした。認定を受けるためにクリアすべき項目を確認していくと、その中に女性の健康について触れられていたため、自然とチャレンジしてみようという流れになりました。

管理職を対象とした社内アンケートで、「管理職として対処に困った経験のある、女性従業員の健康課題や症状があるか」について聞いたのですが、「困った経験はない」という回答が半数以上を占めました。女性に限定した課題に取り組むというよりは「今後、女性がより働きやすい環境にするために、取り組めることは何かを考えていく」といったところが出発点となりました。

性別や職種で“区別がない”社風が、健康経営にプラスに作用

Q:健康経営への施策の一つとして、生理休暇を取りやすくする工夫を行ったそうですね。具体的にどのような働きかけを行いましたか。

女性が働きやすい環境づくりの一環として、生理休暇について、より休暇申請を出しやすい仕組みづくりを行いました。

それまで、生理休暇申請の方法が明確ではなく、取得するには実質、上司などに相談しなければならない状況でした。そこでパソコンから休暇を申請できるフォームの中で、「子の看護休暇」や「介護休暇」といった複数の項目の中に新たに「生理休暇」の項目も追加しました。パソコンを通して申請する仕組みを整えたことで、上司が男性であっても間接的に「生理だ」ということが伝えられるようになり、生理休暇が取得しやすくなりました。実際に、社内の女性社員を対象にしたアンケートで、「通常の休暇と同様に簡単に申請ができるため、安心感がある」「取得理由が社内に公表されないため、申請への心理的なハードルが低い」と言った声が挙がっています。そのほかにも女性の休暇制度を充実させており、妊娠期間から出産後の女性に対して、通院による休暇を取れる制度も新たに作りました。

 

Q:衛生講話をどのように活用されていますか。

上司が男性だと、女性特有のトラブルなどパーソナルな事柄について面と向かって相談しにくいのが現状です。そのような「女性の健康」や「出産・妊娠・不妊」といった話題を衛生講話で取り上げてもらいました。男性社員にも出席してもらい、プロの外部講師を招いて話をしてもらうことで、「俺らにはわからない」「根性や気合いでどうにかならないのかな」といった根底にあるかもしれない意識を少しは変えられたのではないかと思っています。

衛生講話後のアンケートでは、男女ともに「専門家からの正しい情報が得られて良かった」という意見が多く、直接話題にすることはなくても、共通認識が生まれるきっかけになったとも感じています。また、男性社員から「パートナーが不調そうだと感じたら、無理させないように率先して行動しようと思う」といった意見ももらえたので、職場だけではなくプライベートにおいても女性に対する接し方が変わるといった副次的なメリットも生まれてくるのかもしれません。

 

Q:御社に「女性だから」というデメリットやバイアスがない理由について、どのように考えていますか。

当社は、男性の社長と女性の副社長、もう一人の女性の3人で創業した会社です。それゆえに、そもそも起業した時点で、「女性だから」「男性だから」と区別するような考え方そのものがなかったのだと思います。

今でも、男性・女性や職種、年齢によって給与体系が区別されていません。営業担当であっても、事務職でも当社の一員として同等の給与が受け取れます。加えて、社長や副社長との距離が近く、相談し合いながら物事を進めていくことができます。元来、社風として存在していた、ポジティブな意味での「“女性”ということがフォーカスされないフラットな職場環境」が女性の健康問題を理解するといった点においてもプラスに働いていると考えています。

衛生講話を通して情報と知識の共有を

Q:これまでの活動を振り返って、今後さらに取り組みたいと考えていることを教えてください。

現在、サークル活動も展開しており、「ゴルフ」「サバゲー(サバイバルゲーム)」のサークルがあります。社長がサバゲーのサークルに入って、社員とともに活動している企業は珍しいのではないでしょうか。また社長自らがウェアラブルデバイスの開発と同時に、睡眠をより知ろうと「睡眠改善インストラクター」と「上級睡眠健康指導士」の資格も取得しました。ウェアラブルデバイスの部署に所属している社員2名も「睡眠改善インストラクター」を取得しています。このように、サークル活動といった業務以外の関わりで社長や管理職といった立場の方々と雑談できる機会が増えるのはメリットが大きいと感じます。また社長自らが睡眠の資格取得などに前向きに取り組みながら社員を引っ張っていってくれることで、全社員が健康経営を「自分事」として捉えられるようになってきているのだと思います。

また、昨年度は年間を通して社員で歩数を競う「トリニティウォーク」というイベントを行いました。複数のチームに分かれて競い合ったのですが、「私は普段、こんなに歩いていないのか」や「あの人は、しっかりと歩いていて健康に気をつけているな」と意識することが、広く自分自身の健康を気にするきっかけとなりました。このような健康への気づきを得られる取り組みは、積極的に行っていきたいです。

さらに、健康経営へ取り組む中で、産業医との相談窓口も設置しました。今後は、産業医と連携して、メンタルヘルスやうつ病といったことについて社員皆で理解を深めていくイベントを予定しています。衛生講話では取り上げたことがありますが、これらのテーマについてより深く知ることで、一人ひとりが健康経営の活動に、より前向きに取り組みやすくなるのではないかと期待しています。

 

サバゲ―サークル。社長や管理職と業務以外で遊ぶことで、社内に雑談が生まれ話しやすい雰囲気に。

Q:健康経営に取り組みたい企業に、アドバイスできることはありますか。

女性の健康問題については「不調です」と言っても、具体的に「何が辛いのか」「どこが痛いのか」といったところはなかなか理解しにくく、また職場で男性・女性を交えて議論するのは難しい部分だと思っていました。そのような時、衛生講話において、月経前症候群(PMS)といった「身体の仕組み・症状」について解説してもらいました。またそこで様々なアンケート調査の結果を踏まえて「どのくらいの女性が困っているのか」を客観的に示してもらったことで、女性の健康問題をより深く知ることができました。

衛生講話後の社内アンケートでも「不調の原因がわかり安心できた(男性)」「女性特有の不調は体調管理の延長線上だと考える人がいなくなったように感じている(女性)」、「コミュニケーションをよく取り、体調の変化に気がつけるようにしたい(男性)」といった肯定的な意見が出ています。また、自らを省みて「検査を受けようと思った(女性)」という声もありました。これは、健康経営における「健康診断の受診」「受診勧奨」の取り組みにもつながる部分です。健康経営の一つの取り組みが、その他の項目や施策にも連動して好影響を与えることができるのではないかと見ています。アンケートで、当社の女性社員が「女性の健康維持・増進」の施策で最も活用したと答えたのは、「健康診断での婦人科検診」であり、ヘルスリテラシーが底上げできていることが結果として表れています。

女性の健康問題に対応していくことは、次世代の健康に対する投資だとも考えられています。なかなか当事者に尋ねにくかったり、普段皆で話し合ったりしないような健康問題について施策を講じていく際には、衛生講話などを通じて広く知識を共有していくことが有効だと感じています。それぞれの会社が健康経営を実践される際に、当社の成功事例が参考になれば嬉しいです。

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