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ACTION!健康経営 自治体カンファレンス2023

2024.02.15

全国から約20の自治体や支援機関が参加した

経営戦略として従業員への健康投資を行う「健康経営」に取り組む企業が増えている。さらなる普及のためには自治体の支援が欠かせない。そこで健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)は12月25日、初めての「自治体カンファレンス」を都内で開いた。当日の模様と全国の自治体による先進的な取り組みを紹介する。

日本社会支える基盤へ

経済産業省は「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人認定制度」などを通じて健康経営の実践を後押ししてきた。カンファレンスの開会に当たり挨拶した経産省商務・サービスグループ、ヘルスケア産業課の山崎牧子課長補佐は、「効果分析や適切な指標による健康経営の可視化と質の向上、関連産業の創出、社会へのさらなる浸透・定着に取り組み、健康経営を日本の経済社会を支える基盤としたい」と今後の方向性を提示。特に中小企業における健康経営の推進には自治体など地域の支援者が不可欠だとし、カンファレンスを機に自治体間の連携が進むことにも期待を寄せた。

続いて健康経営優良法人認定事務局は「健康経営に取り組む企業が増えることで、医療費の低減や企業の活性化による税収増など地域にもメリットがある」と説明。健康経営はあくまで「経営」手法であることを経営者が認識し、主体的に取り組めるように支援することが大切だと訴えた。

3自治体による事例報告(下記に詳細)に続いて講演したヘルスケアマネジメント協会代表理事の振本恵子氏は、経産省や自治体など公的機関による顕彰制度が健康経営に取り組む動機付けになっている様子を紹介。健康経営のさらなる普及には保険者や商工会議所、メディア、産業医などの専門家と連携し、それぞれの強みを生かして情報を発信することが有効だと語った。

会場ではネットワーキングの時間も設けた。互いに取り組みを紹介し合い、課題について相談する姿も。今後2回、3回と回を重ねてほしいという要望も聞かれた。


横浜市)強固な局間連携で普及推進


【左】健康福祉局 健康推進課健康づくり担当係長 矢島 陽子氏
【右】経済局 中小企業振興課担当係長 宮崎 潤氏

横浜市は従業員の健康づくりに取り組む市内事業所を応援するため、2016年から「横浜健康経営認証」を実施している。健康福祉局と経済局が予算や事務を双方で負担し、連名で制度を運営しているのが特徴だ。取り組みに応じてクラスA、クラスAA、クラスAAAの3区分で認証する。市内およそ1000カ所の事業所が認証を受けるに至っている。

健康経営の効果として「イメージアップ」「健康状態の改善」「欠勤や生産性の改善」を挙げる事業所が多い。健康経営は生産性の向上や業績の改善、人材の確保・定着にもつながる重要な経営手法だ。

認証取得に必要な健康経営宣言は、明文化のうえ事業所内で共有していれば、書式は問わない。

認証を受けると、認証マークを名刺などに表示できる。横浜市中小企業融資制度での金利優遇や保証料の助成などもある。横浜市SDGs認証制度「YSDGs」など、4つの制度で認証を受けた企業は「横浜グランドスラム企業」として表彰する。

市では健康経営に取り組む企業向けにハンドブックを作成し、保健師や栄養士などによる相談や健康機器の貸し出しなども行っている。

経済局は市内3カ所の企業集積地に健康経営支援拠点(ウエルネスセンター)を設けた。ここでは健康経営に関するセミナーなどを開く。商工会議所や工業会連合会など関係団体の協力も得て健康経営の周知に取り組んでいる。今後も健康福祉局と経済局が互いの強みを生かして健康経営の普及に努める。

 

苫小牧市)ホワイト500 自治体初取得

総務部行政監理室 服務主幹 鳥羽 亜矢子氏

苫小牧市は、職員が心身ともに健康であることは組織の活性化や生産性の向上につながり、より質の高い行政サービスの提供を可能にするとの考えから、働き方改革と健康経営を一体的に推進している。2021年から3年連続で「健康経営優良法人」の認定を受け、22年からは「ホワイト500」の認定も受けた。

21年に「健康経営宣言」を行い、職員のヘルスリテラシーの向上や生活習慣病予防、ワークライフバランスの推進など5項目について重点的に取り組んでいる。市長をトップとする推進体制を敷き、総務部は職員向けの各種施策を実施。健康こども部と産業経済部は、企業・市民向けに健康寿命の延伸や健康経営の推進に努めている。

取り組みにより、職員の年次有給休暇、夏季休暇の取得日数は増加傾向にある。ヘルスリテラシーは向上し、健診・検診の再検査受診率はほぼ100%だ。健康課題がない職員はそうでない職員に比べてエンゲージメントが高いという調査結果も出ている。

仕事のパフォーマンスを上げるため、テレワークや時差出勤、働きやすい服装で勤務するナチュラル・ビズ・スタイル、健診再検査などに使えるセルフケア休暇、昼食後に仮眠を取るパワーナップを導入。あらゆるハラスメントを禁止する宣言もしている。

職員を対象にしたアンケート調査では、多くの職員が仕事に主体的に取り組み、互いに認め合って共に働こうとしている様子が伺える。上司は部下を思いやり、自由に発言できる心理的な安心感があると回答した職員も多い。

育児と仕事の両立にも取り組んでいる。健康経営優良法人に認定された市内企業と合同で研修を実施し、管理職は組織として成果を出しながら、自らも仕事と私生活を楽しむ「イクボス」になることを誓う。男性の育休取得率は22年に40・4%となった。

そのほか管理栄養士による栄養指導やパーソナルトレーナーによる運動指導なども実施。マインドフルネスやヨガの研修もあり、職員の健康を総合的に増進している。

 

広島県)データ活用で行動変容促す

健康福祉局健康づくり推進課主査 原田 珠希氏

広島県は2020年10月に総合施策「安心・誇り・挑戦 ひろしまビジョン」を策定した。生まれ、育ち、住み、働いて良かったと心から思える広島県の実現を目指す。ビジョンには17の施策領域があり、健康経営は「健康」領域で取り組んでいる。

ビジョンでは10年後の姿として、県民一人ひとりがライフステージに応じて心身ともに健康で活躍できるようにするとしている。そのために若い時期から健康の大切さとリスクを意識し、運動や食事などの生活習慣の改善をはじめ、健康を維持する行動を身に付けることを目指す。

施策を進める際の具体的な指標として「健康寿命の延伸」に着目。30年の目標値を「全国平均を上回り、平均寿命の延び以上に延伸」と定めた。

健康寿命の延伸には運動習慣が深く関わる。そこで、25年度末までに働き盛り世代(20~64歳)における運動習慣のある人の割合を男性で34%以上、女性で33%以上にする。それと同時に、健康経営に取り組む県内企業数を5600社まで増やす。

こうした目標の達成に向けて、県内企業の経営者などを対象に健康経営セミナーを開くなど健康経営実践企業の拡大に力を入れている。

「健康経営優良企業表彰制度」も創設した。協会けんぽ広島支部が認定する「ひろしま企業健康宣言」認定企業の中から、健康経営に積極的に取り組み、模範となる優れた成果をあげた企業を県知事が表彰する。今後、表彰対象の拡大も検討していきたい。

一方、県内に事業所のある企業の従業員を対象に健康づくりの実証実験も進めている。健康診断のデータから人工知能(AI)が将来の健康リスクを予測し、生活習慣の改善や行動変容を促す。実証実験には49団体の約1000人が参加した。

こうした取り組みにより健康経営を実践する県内企業数は大幅に増加し、右肩上がりの状況が続いている。今後も協会けんぽなど様々な関係機関と連携し、健康経営を実践する企業の拡大に向けた施策を積極的に展開したい。


浜松市)優良法人認定 個別サポート

「予防・健幸都市(ウエルネスシティ)」を目指す静岡県浜松市は、市民の健康増進(健康寿命の延伸)、地域企業の健康経営の促進、ヘルスケア産業の創出に取り組む「浜松ウエルネスプロジェクト」を展開している。

地域企業の健康経営の促進については、主に4つの支援メニューを用意している。

①2023年度の健康経営セミナーは、健康経営の基本的な情報を発信する基礎編と、取り組み事例を紹介する実践編に分けて実施した。

②健康経営優良法人認定個別サポートは協会けんぽと連携し、認定を受けるための申請書作成を支援。認定企業数は23年に182社で、この3年間で2・8倍と大きく拡大した。

③健康経営応援事業では「職場で健康講座」を開催している。保健師、管理栄養士、歯科衛生士が企業を訪問し、従業員の健康づくりに関する課題をヒアリングしながら適したテーマで講座を開く。

④健康経営優良法人認定を取得している企業について、22年度から公共調達における優遇措置を設けた。総合評価落札方式の建設工事などで評価加点を実施する。認定取得を目指すきっかけになっているという。

こうした支援メニューを分かりやすく整理したチラシを作成し、協会けんぽと連携して企業に送付している。

 

新潟県)啓発や周知に 民間の力活用

新潟県は2019年度から「健康立県」を掲げて県民の健康寿命の延伸を目標に様々な取り組みを進めている。その中で「にいがた健康経営推進企業」の登録制度を始めた。企業を切り口に働く世代の健康づくりを後押しする。

多くの企業に取り組んでもらうため、登録要件は喫煙・飲酒などの6分野のうち、1つ以上に取り組んでいることとし、同時に、取り組みの質向上を図るため、22年にランクアップ制度を新設。23年に「にいがた健康経営推進企業マスター」73社を認定した。

健康経営マスター73社のうち、特に顕著な取り組みをしている企業について県知事表彰を行い、表彰式の様子を新聞など各種メディアで広く紹介、企業の価値向上を図った。

健康経営推進企業の登録数を増やすため、登録を要件に「健康づくり補助金」の交付や、建設工事入札参加資格の加点対象とするなど優遇措置も実施している。

報道機関や保険会社と連携協定を結んでいるのも特徴だ。各種媒体を使った広報に加えて、保険会社は企業訪問の際に健康経営推進企業の登録制度の紹介や、書類の作成を支援する。

今後も企業が自ら健康経営の取り組みを深化できるように後押ししていく。

 

宇部市)認定の取得を 補助の条件に

山口県宇部市は、働く世代を意識した健康づくりメニューとして、企業に訪問して実施する「出前講座」を提供している。市の保健師や管理栄養士などの専門職が無料で講習を行うもので人気が高い。

2015年に「健康づくり推進条例」を施行し、16年から「健康づくりパートナー」制度として健康経営に取り組む企業の登録拡大に取り組んできた。

市内企業にアンケート調査を実施したところ、採用や離職防止に課題を抱えている企業が多かった。その解決のためには健康経営を後押しするのが有効ではないかと考え、22年度から「健康経営支援補助金」を始めた。健康づくりパートナーに認定されていることを補助の要件とすることで、登録数の増加と取り組みの質向上の相乗効果を狙っている。

23年度には「健康経営セミナー」を初めて開催した。新たに健康経営に取り組む企業を増やすことを目的に、健康経営とは何か、どこから着手するか、他社の事例などを紹介。約70の企業・団体が参加し、大きな反響があったという。

健康経営の認知・普及を推進するには採用や離職防止につながるといった効果の可視化が重要だと考えている。今後も健康福祉部と産業経済部で連携し、情報の提供や支援を進めていく。

 

大府市)企業の声聞き 施策に生かす

愛知県大府市は1974年から「健康都市」を都市目標に定め、市民の健康づくりに取り組んできた。健康経営を意識したのは2015年ころ。市民の健康づくりにおいてアプローチしにくい働き盛り世代の健康増進に、健康経営は効果的だと考えたという。

大府市内には健康経営優良法人の認定企業が多い。23年度には健康経営優良法人の認定取得について支援補助金を設け、さらなる認定取得を後押ししている。

健康経営推進のためには、経営者と担当者の理解が不可欠だ。そこで経営者が会員である商工会議所と、担当者に支援メニューを提供できる協会けんぽと連携協定を結んだ。3者でセミナーや交流会を開催している。特に交流会は企業の担当者同士がつながれる良い機会となっている。

商工会議所、協会けんぽと連携したことで、それぞれの強みを生かした啓発や企業への訪問がしやすくなった。毎年度、約20件の企業を訪問し、課題などをヒアリングして施策に反映している。ヒアリングを通じて伴走支援することで、新たに健康経営に取り組む企業を増やしたいとしている。

大府市役所は23年に健康経営優良法人の認定を受けた。自ら健康経営に取り組み、交流会などを通じてノウハウを共有したいと考えている。

 

松本市)優遇と支援策 産業の創出も

長野県松本市は、健康福祉部だけでなく、産業振興部の商工課や労政課も健康経営の支援を行っている。労政課は地道に企業を訪問し、協会けんぽの「健康づくりチャレンジ宣言」の紹介に努めている。2022年度は約90社に訪問した。

健康経営優良法人の認定企業を対象に、総合評価落札方式による建設工事の発注において評価加点する優遇措置を実施している。認定企業が増えて加点を得ることが当たり前になりつつあり、健康経営の推進効果を実感している。

「いい街つくろう!パートナーシップまつもと」では、健康経営を推進する市内企業も利用できる講座を開いている。生活習慣病予防のための食事に関する講座などが人気だという。

「松本ヘルス・ラボ」では、市民会員を対象にしたモニター調査を通じてヘルスケア産業の創出に取り組んでいる。「松本市ヘルスケアサービス等実用化検証事業助成金」では、これまで健康経営の戦略的導入による経営改善効果の検証事業などを支援した。

松本ヘルス・ラボの法人会員に対しては、健康運動指導士によるオフィスでできる運動教室など従業員の健康づくりを支援するメニューを提供している。働き盛り世代の健康増進にアプローチする手段として法人会員の拡大を図る。

 

自治体施策の主な特徴)関係者で連携 企業巻き込む

企業が健康経営に取り組むきっかけとして、多くの自治体が宣言や登録制度を活用している。企業への出前講座や健康経営セミナーなども盛んだ。

取り組みの質向上を促す施策として、ランクアップ制度や健康経営優良法人認定の申請書作成支援、補助金の交付などを行う自治体もある。公共調達における優遇制度は、企業が健康経営を深化させる動機付けとして有効なようだ。

健康経営推進において「連携」は重要なキーワードだ。健康系部門だけでなく産業系部門を巻き込むことで、企業に対して経営手法としての健康経営をアピールできる。横浜市のように2つの課が共同で取り組む例もある。

商工会議所や協会けんぽと連携する自治体も多い。新潟県のように報道機関や保険会社と協定を結んで健康経営の啓発に成果を上げている例もある。

都道府県と市区町村で役割を分担している様子も伺えた。都道府県は広域を対象に知事表彰などを行う例が多く、市区町村は企業の身近な伴走者としてきめ細かな支援を実施している。

苫小牧市や大府市のように、自治体が健康経営優良法人の認定を受ける例も出てきた。自治体間の交流が活発になり、様々な取り組みが深化していくことが期待される。


寄稿)積極的な関与に期待

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 望月 弘樹氏

地域における健康経営の推進を目指し、健康経営優良法人認定制度が創設されてから8年が経過した。認定法人数は年々着実に増加しており、昨年度大規模法人部門で2676法人、中小規模法人部門で1万4012法人が認定されている。

中小企業の健康経営の推進にあたっては、協会けんぽをはじめとする保険者はもとより、自治体の役割は極めて大きく、現在でも自治体独自の健康経営表彰制度や、補助金・公共調達加点などのインセンティブ、保険者などと連携したセミナー開催、保健師・管理栄養士などの相談機会の提供といった様々な支援を実施している。

横浜市では健康福祉局と経済局が予防・健康づくりのノウハウと企業ネットワークというお互いの強みを生かした庁内連携による取り組みを進めている。また、広島県では県だけでなく、保険者、商工団体などと連携した取り組みを進めている。

苫小牧市では自治体自ら健康経営に取り組むことで、行政における健康課題を把握。課題解消につなげる健康経営施策を自ら検討・実践し、効果分析をも実施している。自治体自身が健康経営に取り組むことで、健康経営推進上の課題と中小企業に本当に必要な支援とは何であるかを、身をもって体感できるのではないだろうか。

地域の健康課題やリソース、実態を把握している自治体には、中小企業に寄り添い、かゆいところに手が届く支援を期待するとともに、積極的に健康経営推進の主体として関与し、地域において特色のある健康経営の姿を示すことを期待したい。

 


2024年2月15日付 日本経済新聞朝刊 健康経営広告特集より転載。記事・写真・イラスト等すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。

企画・制作=日本経済新聞社 Nブランドスタジオ

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