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ACTION!健康経営

2025.10.07

日本経済新聞 2025/9/22掲載 寄稿「真剣に向き合い、学び、活用を」

順天堂大学大学院の和田裕雄教授に、今こそ「真剣に健康経営と向き合い、学び、活用する時期」と呼びかける寄稿をいただきました。

寄稿 真剣に向き合い、学び、活用を

健康経営が企業や社会に与え得るインパクトについて、様々な角度から研究が行われている。順天堂大学大学院の和田裕雄教授は、今こそ「真剣に健康経営と向き合い、学び、活用する時期」だと呼びかける。

順天堂大学大学院 医学研究科教授
和田 裕雄 氏

労働力縮小対策の糸口にも

従業員の健康を守るため、従来は労働基準法などの法令順守、福利厚生の充実化などが行われてきた。しかし近年、従業員の健康に投資するとモチベーションが上がり、企業の利益が増大するという健康経営の考え方が提唱され始めた。

健康経営に関するエビデンス構築には、学問的には医学・公衆衛生学と経済・経営学の垣根を越えた分析が必要だ。健康経営の社会実装に向けて、そのメカニズムを解明することが求められる。

健康経営のメカニズムを説明する理論の一つが人的資本経営だ。人的資本とは個人レベルの能力・知識などを指す。人的資本経営では、これに投資することで人的資本ストックが増加し、生産性向上に至る。

従業員がやる気になるように、モチベーションやインセンティブの役割も考慮を要する。人的資本への投資と従業員の健康に対する投資は定義の上では異なるが、モチベーションが高まることによる生産性向上など共通するメカニズムが存在し、密接な関係にあると考えられる。

最近の産業医業務では、高齢従業員、女性従業員、外国人従業員の健康課題に対応することが増えつつある。この課題は、医学・公衆衛生学領域の健康課題であると同時に、我が国の将来に危惧される労働力縮小という経済・経営学領域の課題でもある。健康経営および人的資本経営の考え方は、その対策の糸口にもなり得る。

このように考えると、健康経営は一企業の経営方針にとどまらず、国家の在り方や将来を規定し得る思想へと展開できるだろう。我々が真剣に健康経営と向き合い、学び、活用する時期が来ているのではないだろうか。

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