健康経営について理解を深め、実際に取り組む企業の好事例などから気づきを得られる地方開催のACTION!セミナー。2024年の第1弾となる「健康経営で企業の魅力づくりACTION!セミナー in 浜松」が、2024年7月31日(水)に浜松市で開催されました。静岡県の健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定数は576社にのぼり、年々順調に増加しています。企業からの注目度が上がり続けている中、今後の取り組みやさらなる発展につなげたいと多くの方々が参加されました。
登壇者と各発表の概要
・経済産業省
健康経営が求められる社会的背景や労働市場と健康経営の関係性について紹介。また今年度の申請における変更点などについても説明しました。
・協会けんぽ静岡支部
協会けんぽ静岡支部が取り組む健康宣言や調査結果、その先にある健康経営優良法人について話がありました。
・静岡県
静岡県の健康寿命の現状や課題、健康経営を支援するための施策について紹介されました。
・浜松市
ウエルネスシティ(予防・健幸都市)の実現に向けたさまざまな施策や浜松市の健康経営支援について説明がありました。
・<実践企業事例>株式会社ソフトウェアプロダクツ
健康経営に取り組むに至った社内の状況や施策、社員からの実際の反応や効果について講話いただきました。
・健康経営優良法人認定事務局
ポータルサイトについての説明や今年度の申請における改定ポイントについて紹介しました。
これからの健康経営(経済産業省)
プログラム第1部では、経済産業省が「これからの健康経営」というテーマで講演しました。健康経営が重要視されるに至った社会的な背景や制度のあらまし、さまざまな調査から見えてきた労働市場との関係性について紹介。また、充実した取り組みによって、機関投資家からの評価や採用活動においてもプラスに働くことが説明されました。また、補助金や特別利率といったインセンティブが受けられることについても言及されました。静岡県の健康経営度調査への回答数・認定数(大規模法人)と認定法人割合・年間認定法人増加率(中小規模法人部門)は、都道府県ごとの比較でいずれも中程度の位置にあり、今後より上へ進めるように期待していると述べました。また、健康経営推進にあたっては地域の支援者の存在が重要であることを指摘しました。
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※一部、セミナー当日時点の画像・情報等を申請開始後のものに更新しています。
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協会けんぽ静岡支部の健康経営についての取組(全国健康保険協会静岡支部)
第2部は、協会けんぽ静岡支部 木村成範氏(以下、木村氏)が、静岡支部が推進・サポートする健康宣言と健康経営優良法人について解説しました。
木村氏 健康経営への取り組みを始めるにあたり、第一歩となるのが「健康宣言」です。健康経営優良法人(中小規模法人部門)を申請する際、「健康宣言していること」が必須要件となっています。静岡支部の特徴は、県が取り組む「ふじのくに健康づくり推進事業所」と連携していることです。協会けんぽの健康宣言に届け出することで、県からも認定証が交付される仕組みになっています。この健康宣言を行った企業数について、静岡支部は令和6年6月時点で6,900社を超えており全国第2位となっています。企業の皆様がいかに高い関心を持っているのかを実感しているところです。
健康宣言の内容には「社員の健診100%実施を目指します」「保健指導の実施率50%以上を目指します」といった共通項目があります。健康宣言を行った企業とそうでない企業のこれらの実施率を調査したところ、健診受診率は77.19パーセント(健康宣言有)・56.92パーセント(無)、特定保健指導実施率は31.39パーセント(健康宣言有)・19.30パーセント(無)と差が出ていることがわかりました。加えて、協会けんぽ静岡支部に加入している企業の健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定数は452社であり、年々増加の推移を辿っています。今後もサポートを続けていきますので、ぜひこの機会に活用を検討してほしいと思います。
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静岡県の健康経営の取組について(静岡県)
第3部は静岡県健康福祉部健康局健康増進課 川田敦子氏(以下、川田氏)が「静岡県の健康経営の取組について」と題して、県内における健康寿命の現状や健康経営に対する支援策の中身について講話しました。
川田氏 静岡県は男女ともに健康寿命が全国トップでした。しかし近年は、各都道府県が健康寿命を延伸するべく取り組みを行っているため、男性73.45歳・女性76.58歳でともに全国5位です(2019年)。しかし、健康寿命自体は少しずつプラスとなっていますし、依然全国トップレベルを誇っています。健康課題について、高血圧症やメタボ、喫煙、肥満といった有病者は東部の方が多く、地域差が出ているのが特徴です。そのため健康経営を考える際は、企業の位置する場所や従業員の住まいといった点も参考にしてほしいと考えています。
加えて、静岡県では脳血管疾患で亡くなる方が多いのが課題です。これが政策のミソとなり、疾患につながる高血圧や喫煙、糖尿病といった危険因子を低減するための取り組みに重点を置いています。その他、お口の機能のささいな衰えが心身の機能の衰えにつながることから、オーラルフレイル(口腔機能の衰え)を防止するように啓発活動を行っています。
健康経営への支援には、協会けんぽと連携してふじのくに健康づくり推進事業所宣言を行っており、令和6年5月時点で7,416社が宣言事業所となっています。認定証も継続年数に応じてホワイトからゴールドまで4つに分けられており、健康増進課や健康福祉センターへの相談、宣言後に無料で利用できる健康づくりアドバイザーの派遣等も行っております。企業の方々は、まずは健康経営に向けて社内外に宣言することから始めてみてはいかがしょうか。
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浜松ウエルネスプロジェクト「 Wellness City/予防・健幸都市」の実現に向けて(浜松市)
第4部は、浜松市ウエルネス推進事業本部 松下直樹氏(以下、松下氏)が「浜松ウエルネスプロジェクト -『Wellness City/予防・健幸都市』の実現に向けて-」の題で、プロジェクトの目的や事業、浜松市の健康経営支援について紹介しました。
松下氏 ウエルネス推進事業本部は、さまざまなウエルネスに関する取り組みを推進しています。浜松市の強みは全国トップレベルの健康寿命や政令指定都市幸福度ランキング第1位(2022年版日本総合研究所調査)、世界的企業が誕生している産業力、産学官の連携力です。これらの強みを活かし、労働力の減少や医療費などの社会保障費の増加といった全国的な課題に対応し、健康と産業をかけ合わせて持続的に発展する「ウエルネスシティ(予防・健幸都市)」を実現すべく官民連携で取り組んでいます。おかげさまで浜松ウエルネスプロジェクトの趣旨や目的を理解していただき、多くの企業や団体の方々に参画・協力いただいています。
浜松市の健康経営優良法人認定数について、令和5年度は184社(大規模法人部門15社、中小規模法人部門169社)となっています。ものづくり企業が多い市ですから、そのような企業の皆様にぜひ取り組んでほしいと感じています。市では協会けんぽと連携して取り組みを支えるサポートを展開しており、また認定を受けた企業に対して市の建設工事や指定管理者の選定などで優遇措置を設けています。現在、企業向けの健康講座やヘルスケアアプリも提供しており、さらにこの夏には、健康経営に関する補助制度を創設する予定です。各種支援が健康経営に取り組む一助となればと願っています。
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<実践企業事例>WELL-BEING から健康経営を考えてみる(株式会社ソフトウェアプロダクツ)
続いて、静岡県内の実践企業事例として、株式会社ソフトウェアプロダクツ 石川寿子氏(以下、石川氏)が登壇。健康経営を実施するに至った経緯や効果について講演されました。
石川氏 創業から57周年を迎えた当社(SPC)は、地元密着で製造業向けの生産管理・販売管理といったソフトウェアの開発を行っています。企業ビジョン「惚れる会社になる」を掲げて、健康経営・ワークライフバランス・ダイバーシティを取り入れていこうと動き出したのが導入のきっかけです。内情としては、長く事業活動する中で社員の平均年齢が上がっていき、ある時期に「糖尿病が悪化して入院する」「突然骨折してしまった」「腰痛が悪化し、手術しなければならない」など戦線離脱する社員がまとまって出てきてしまいました。当時の社長の強い思いもあり、職場の環境整備をしなければならないと2015年に健康経営の宣言に至りました。
限られた人的資源と予算の中で「敷地内禁煙」といった小さなことからスタートしました。健康経営の取り組みとしては健康診断のオプション受診費用補助、スポーツクラブの月会費補助、ストレスチェックなどを実施しています。さらに、女性セミナーを女性とその上司(男性管理職)向けに開き、女性が定年まで働き続ける際に直面する、男性とは異なるストレスについて理解を深める機会を提供しています。
健康経営を始めた、敷地内禁煙を行った直後のES調査のコメントには「喫煙者としてマナー・ルールを守っているのに目の敵にするための費用対効果が理解しかねる」「会社が『健康』を強要するのはおかしい」といった拒絶反応が見られました。しかし、それでも経営の一環として経営者からトップダウンで進めていくことが重要であり、どの社員にも100パーセント受け入れられる施策を実行するのは難しいですが、「Aは嫌だけど、Bなら協力できる」「Bは無理だが、Cはクリアしたい」とトライアンドエラーを続けたことで、徐々に浸透していったように感じます。
健康経営の効果を最も感じたのは、採用活動です。2015年以前は1、2人といった採用でしたが、同時期に健康経営と新卒採用に力を入れたことも奏功して当社に興味を持つ方が何十倍にも増えました。なぜエントリーしたか尋ねると「社員を大切にしている会社だから」という声が聞かれます。加えて数字として表れた効果については、2021年度に初めてストレスチェックをしたところ、「高ストレス者」の割合が10パーセントを超えていました。そこで「社長と社員のone on one」や全社員対象の「ハラスメントワークショップ」「メンタルヘルスワークショップ」、「対象者・上司・担当者・社長で面談」など色々な角度からアプローチし、2023年度には半数以下にまで減少させることができました。これ以外にも、若い社員の方が中心となってイベント等のコミュケーションの機会をつくってくれたり、自然な会話の中で「自炊でいいレシピを教えて」といった健康に関するトピックが増えたりすることで社員の健康経営への理解度や協力する姿勢が培われているようです。
今後も「惚れる会社」を目指して、社員一人ひとりが輝けるように環境整備に取り組んでいきます。
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健康経営優良法人認定制度について(健康経営優良法人認定事務局)
最後に、健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)がポータルサイト「ACTION!健康経営」で活用してほしい点や申請時の注意点などについて解説しました。さらに、フィードバックシートの開示や中小規模法人部門の「ネクストブライト1000」、小規模法人への特例制度の導入といった今年度の申請における改定ポイントを説明。申請数の増加により年々狭き門となっている「ブライト500」に加え、上位500〜1,500位に「ネクストブライト1000」を新設することに触れ、ぜひ上位を目指してほしいと話しました。健康経営に取り組むことはコラボヘルスの実現、地域の医療機関や経済団体、金融機関との連携力強化、ひいては地域経済の活性化につながるとあらためて強調し、”浜松”はこれらが形づくられているので、引き続き取り組んでいってほしいと語りました。
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※一部、セミナー当日時点の画像・情報等を申請開始後のものに更新しています。