健康経営に関わる専門職の視点から、健康経営のメリットや効果を多面的にひも解くインタビューシリーズです。
管理栄養士は、栄養や食生活の視点から健康経営をサポートする専門職です。今回は管理栄養士の大宜見かおり氏に、企業が取り組みやすく、かつ効果を上げやすい健康経営の進め方を伺いました。
プロフィール
大宜見かおり
株式会社ホウゴ 管理栄養士、琉球料理伝承人、健康運動指導士
大手ヘルスケアフードサービス会社に勤務し、病院や高齢者施設での食事提供に従事したのち、一般社団法人トータルウエルネスプロジェクトオキナワおよび株式会社ホウゴに所属。主に沖縄県内で企業・団体向けの講師活動を行い、食と栄養の観点から健康経営を支援する。
食習慣の改善と健康を大切にする組織風土づくりをサポートする仕事
ーー管理栄養士として、どのような立場で健康経営に関わっていらっしゃいますか?
食と栄養の専門家として、企業の健康経営の取り組みをサポートしています。
管理栄養士は栄養士の上位資格にあたり、より高度な専門知識や技術を生かして、食事や栄養についての集団・個別指導を行います。また、現在の私の業務では行っていませんが、医師の指示に基づく傷病者への食事指導や、生活習慣病リスクのある人への特定保健指導も担えます。
ーー具体的な支援内容を教えてください。
社内でのセミナーや従業員向け個別相談などのプログラムを通じて、食生活や健康意識の改善をサポートしています。健康情報が世にあふれる中、専門家として、最新の医学的エビデンスに基づいた正しい情報提供を心がけています。
プログラム内容は企業ごとの課題や状況をヒアリングしながら検討します。例えば、肥満が課題の企業であれば、職場で話題にしやすいランチをテーマに、職種や性別・ライフステージに合わせた摂取量、栄養バランスに基づくメニューの選び方についてのセミナーを企画します。対面のセミナーだけでなく、オンラインセミナーを併用してアーカイブ動画を配信したりと、参加率を上げる工夫も考えます。
ーー食や栄養の観点から見て、まず健康経営に取り組む上で行うべきことはなんですか?
まず、社員全員が定期健康診断や特定健診を受診することだと思います。健康保険組合や協会けんぽといった医療保険者による特定保健指導にも積極的に協力してください。
特定保健指導では、いわゆるメタボ健診(特定健診)で生活習慣病リスクが判明した40歳以上の方を対象に、保健師や管理栄養士など専門職が生活習慣や健診数値の改善に向けて集団・個別指導を行います。専門職が勤務時間中に職場を訪問して指導するケースも多いため、部署内外で業務を調整するなど、会社として従業員が確実に指導を受けられる環境を整えることが必要です。
(注:特定保健指導の対象者を企業と保険者が共有する場合は、個人情報保護法に基づく個人情報の共同利用の手続きが必要です)
ーー企業の中で誰を巻き込むと健康経営が進みやすいと考えますか?
まずは経営者、そして各部署の管理職を巻き込むと良いです。マネジメント層の理解と積極的な関与があると円滑に施策を行いやすくなります。健康経営のための新しい会議体を作るよりも、すでにある定例会議、例えば安全衛生委員会などに健康経営に関する議題を組み込むと受け入れられやすいです。さらに、会議の場で産業医や管理栄養士、理学療法士など専門職から健診結果などの分析結果をもとに健康経営の重要性を解説してもらうと説得力が増します。
マネジメント層の理解があると定期健診の全従業員の受診や、特定保健指導を受けてもらうための業務調整をより行いやすくなるうえ、経営方針の中に従業員の健康を入れることも考えてもらえます。
ーー健康経営の効果として現場が感じられる「変化」や「手応え」にはどのようなものがありますか?
従業員同士のコミュニケーションで相手の健康を思いやる発言が出てくるなど、組織全体での健康意識に変化が現れます。健康を大切にする組織風土が根付くと、従業員が重大な疾患で突然倒れてしまうような事態を未然に防ぎやすくなります。
私が過去に高血圧対策プログラムを提供していた企業では、偶然居合わせた社外関係者が従業員の方の勧めで血圧を測ったところ、危険なレベルの血圧値であることがわかり、通院から早期治療につながりました。このように健康経営が社内に浸透し、社外まで波及すれば、企業イメージも向上します。
ーーこれから健康経営に取り組む企業へ、どのような意識で取り組めばよいかメッセージをいただけますか?
健康経営に関わる管理栄養士のような専門職や外部の力を借りるのも一計です。
従業員に自分の健康状態を把握してもらい、専門職の協力を得て数値の意味や生活習慣を振り返ってもらう機会を作れば、「血圧が高くてC判定だった」で終わらず、次の行動に繋がると思います。医療保険者や自治体が提供する啓発ツールを活用する方法もあります。ぜひ健康経営担当者一人で抱え込まず無理なく取り組んでみてください。
まとめ
脳梗塞や心筋梗塞といった生活習慣病に関わる疾患で従業員が突然倒れてしまう事態は、本人はもちろん、企業にとっても大きな損失です。管理栄養士は、健康を大切にする組織風土づくりで貢献が可能です。管理栄養士を窓口に医療保険者と連携したり、ほかの専門職の力を借りたりしながら、できる取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。